肩こりのつらい痛みを緩和
市販薬の選び方と必要な知識
「国民病」ともいわれる肩こり。
痛みを伴うことも多く、その肩こり痛には
湿布やマッサージで対処しても
なかなか改善せず、市販薬を試そうとしても
飲み薬・貼り薬・塗り薬と種類が多く、
どれを選べばよいのか迷ってしまう人も多いでしょう。
肩こり痛を和らげるには、
自分に合った市販薬を選ぶことが大切です。
本コンテンツでは、市販薬の選び方とそれに必要な基礎知識を紹介します。
肩こり痛をやわらげる鎮痛成分
はじめに、肩こり痛に効果がある市販の飲み薬に含まれる主な鎮痛成分を紹介します。
市販薬の飲み薬によく含まれている有効成分を知ろう
肩こりと肩こり痛は、薬の効能表示において異なる意味をもちます。
- ・肩こり:筋肉の緊張や血行不良による不快感
- ・肩こり痛:筋肉の過緊張や神経の圧迫、炎症などにより生じる明確な痛み
そのため、筋弛緩成分は「肩こり」に、鎮痛成分は「肩こり痛」に効果があると表示されます。それぞれ、主な有効成分は以下の通りです。
【鎮痛成分(肩こり痛)】
- ・ロキソプロフェン:即効性があり、胃への負担が少ない
- ・イブプロフェン:炎症をおさえる作用
- ・アセトアミノフェン:胃にやさしく高齢者にも適しているが、抗炎症効果は控えめ
【弛緩成分(肩こり)】
- ・クロルゾキサゾン、メトカルバモール:筋肉の緊張を緩和する
また、筋肉の疲労回復を助けるビタミンB1や体質を整える漢方薬なども、肩こりの緩和や改善に役立ちます。
「飲み薬」「貼り薬」「塗り薬」の違い
肩こり痛の市販薬には、飲み薬・貼り薬・塗り薬の3タイプがあります。
以下がそれぞれの薬の主な特徴や期待できる効果、使用する際の注意点です。
※横スクロールでご確認いただけます。
各薬の 説明 |
飲み薬 | 貼り薬 | 塗り薬 |
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薬の主な特徴 |
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期待できる主な効果 |
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使用する際の注意点 |
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肩こりの貼り薬はセルフメディケーション税制の対象
セルフメディケーション税制とは、対象となる医薬品の年間購入額が一定額を超えた場合に、確定申告を通じて所得控除が受けられる制度です。肩の痛みに使われる貼り薬の中にも、該当する製品があります。
この制度を利用するには、健康診断や予防接種など、一定の健康管理を受けていることが条件となります。また、対象品目のレシートを保管しておく必要があります。
薬の服用とあわせて他の療法も併用すると効果的
薬の服用に加え、日常的なケアや非薬物療法を組み合わせることで、肩こり痛の改善効果が高まります。取り入れやすいのはマッサージ療法です。筋肉をもみほぐして血流を促すことで、痛みの原因となる老廃物の排出が進みます。痛みがやわらいだタイミングで行うと、深部まで作用しやすくなります。
運動療法も予防・改善に効果的です。肩甲骨まわりのストレッチや軽い体操で柔軟性が高まり、長時間同じ姿勢でもこりにくい状態を保てます。デスクワーク中心の人は、肩や首を定期的に動かす習慣をつけましょう。
また、温熱療法も有効です。温湿布や入浴、蒸しタオルで肩を温めることで筋肉がゆるみ、血行が促進されます。冷えによるこりや慢性痛に悩む人におすすめです。
病気や体質要因の肩こり痛である可能性も考慮に入れる
市販薬やセルフケアで肩こり痛を和らげても、症状が長引いたり悪化したりする場合は、単なる筋肉疲労ではなく、他の疾患や体質的要因が関係している可能性があります。
例えば、肩こり痛に加えて腕のしびれや感覚異常がある場合、頸椎の異常が原因のこともあります。椎間板ヘルニアや変形性頸椎症などが神経を圧迫し、痛みを引き起こすケースがあります。この場合、市販薬やマッサージでは一時的な緩和にとどまり、根本的な治療が必要です。
また、高血圧・低血圧など循環器の不調も、肩こり痛の一因となることがあります。血流の乱れで筋肉に酸素が行き届かず、疲労物質が蓄積して慢性化しやすくなります。めまいや倦怠感、頭痛を伴う場合は注意が必要です。
このように、肩こり痛は全身の状態と深く関わっており、セルフケアで改善しない、または日常生活に支障がある場合は、早めの受診が大切です。
肩こり痛緩和のための
市販薬の選び方
ここでは、肩こり痛緩和のための市販薬の選び方を紹介します。
内服薬・外用薬・漢方薬のどれが適切?
即効性や広範囲の痛みに対応したい場合は、内服薬が適しています。成分が血流を通じて全身に届くため、肩だけでなく首や背中、腕にも痛みがある人に向いています。ただし、胃腸への影響や他の薬との併用には注意が必要です。
一方、痛みが局所的な場合は外用薬が効果的です。貼り薬は長時間作用し、仕事中や就寝時にも使いやすいのがメリットです。塗り薬はすぐに塗れてべたつかず、外出先でも便利です。冷感・温感タイプがあり、炎症の有無や好みに応じて選べます。
また、漢方薬は肩こりに加えて冷えや倦怠感などの不調がある人に有効です。
鎮痛効果・弛緩効果を含有成分でチェック
肩こり痛に対する市販薬は、期待できる効果ごとに成分が異なります。
※横スクロールでご確認いただけます。
期待できる 効果 |
内服薬によくみられる成分 | 外用薬によくみられる成分 |
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鎮痛効果 | ロキソプロフェン、イブプロフェン、アセトアミノフェン | サリチル酸メチル、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェン |
弛緩効果 | クロルゾキサゾン、メトカルバモール | インドメタシン+温感タイプ(血行促進による緊張緩和) |
購入前にはパッケージや説明書をよく確認し、自分の症状や使用シーンに合った効果をもつ成分をチェックしましょう。
特に内服薬の場合には胃粘膜保護など状況に応じた製剤を選ぶ
内服薬は即効性があり全身に作用する一方で、体質や健康状態に応じた慎重な選択が求められます。特に注意したいのが胃腸への影響です。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は効果が高い反面、胃粘膜を刺激しやすい性質があります。この点は、NSAIDsの中で胃腸障害の副作用が比較的少ないイブプロフェンでも同様です。
胃が弱い人や空腹時に服用する可能性がある場合は、胃粘膜保護成分入りや腸溶性コーティングの錠剤を選ぶとよいでしょう。
また、服用回数をおさえられる徐放性製剤もあります。痛みが断続的にでる人や、日中にこまめな服用が難しい場合には、こうした製剤の方が継続しやすくなります。
即効性をチェック
すぐにでも痛みを緩和したいときは即効性に注目しましょう。飲み薬では、ロキソプロフェンやイブプロフェンなどが即効性に優れています。炎症をおさえることで、服用から30分〜1時間ほどで効果を感じることもあり、急な痛みに適しています。
外用薬にも即効性のあるタイプがあります。冷感の塗り薬は塗布直後にひんやりとした感覚があり、違和感を一時的に緩和します。ジェルやスプレータイプは浸透が早く、スピード重視の人に向いています。
飲み薬が苦手な人は貼り薬や塗り薬を
外用薬は皮膚から有効成分を浸透させ、肩の筋肉や神経に直接作用します。全身への影響が少なく、胃腸への負担も軽いため、内服薬に抵抗がある人にも使いやすいのが特徴です。
貼り薬は持続性に優れ、肩に貼るだけで成分が浸透します。温感タイプは血行を促進し、冷感タイプは炎症や熱感の緩和に適しています。近年は剥がれにくい製品も増え、仕事中や外出先でも使いやすくなっています。
塗り薬は手軽で、ジェルやスプレーなど剤形も豊富です。においや使用感に配慮された処方も多く、必要なときにすぐ使えます。
「鎮痛効果」「弛緩効果」をそれぞれチェック
鎮痛成分には、ロキソプロフェン、イブプロフェンなどがあります。炎症をおさえたり痛みの感覚を軽減する作用があり、鋭い痛みや緊張性頭痛をともなう肩こり痛に適しています。
一方、筋肉のこわばりや血流不良には、クロルゾキサゾンやメトカルバモールなどの筋弛緩成分が有効です。中枢神経に作用して筋肉をゆるめ、慢性的なこりや張り感に対応します。
痛みとこりが混在する場合は、鎮痛成分と弛緩成分を併せもつ製品を選ぶと、複合的な症状にも対応しやすくなります。
副作用の可能性をチェック
市販薬は手軽に使える一方で、体質や使い方によっては思わぬ副作用をまねくこともあります。特に肩こり痛で繰り返し使用する場合は、成分の特徴とリスクを正しく理解しておくことが大切です。
例えば、筋弛緩成分には、眠気やふらつきといった副作用がでる場合もあります。運転や集中力を要する作業がある日は、服用を控える判断も必要です。
貼り薬では、長時間同じ場所に貼り続けることでかぶれや赤みが生じることがあります。塗り薬も、メントールやカプサイシンなどの刺激成分により、ピリピリ感や熱感を感じることがあります。
敏感肌やアレルギー体質の人は、使用前にパッチテストを行ったり、薬剤師に相談したりすると安心でしょう。