COLUMN 1

薬剤使用過多による頭痛(MOH)

「頭痛薬って飲みすぎると効かなくなるの?」 知っておきたい、MOHのこと

「頭痛薬って、飲みすぎると効かなくなるの?」「ずっと飲んでるとクセになっちゃう?」 こんな疑問を持っている方が意外と多いんですよ。市販の頭痛薬は、用法・用量を守って正しく使えば、耐性ができたり依存する心配はほとんどありません。だから、つらい頭痛のときに適切に使うのは全く問題ありませんよ!
でも、少し注意が必要なこともあります。「頭痛薬の飲みすぎが、逆に頭痛を引き起こしてしまう」という現象が、まれに起こることがあるんです。これを「薬剤の使用過多による頭痛(MOH: Medication-Overuse Headache)」といいます。驚きですよね、頭痛を和らげるために飲んでいた薬が、逆に頭痛の原因になってしまうなんて!
MOHは、頭痛薬を飲む頻度が多くなりすぎることで起こる頭痛です。ですが、心配しないでください。正しい使い方を知っていれば、MOHは防げるんです。もしMOHになってしまったとしても、適切な治療があります。このコラムでは、MOHにならないための大切なポイントをわかりやすく解説しますので、一緒に頭痛薬と上手に付き合い、つらい頭痛をしっかりコントロールしていきましょう!

MOHの原因とメカニズム

MOHは、頭痛薬を過剰に使用することで、かえって慢性的な頭痛を引き起こす状態です。特に以下のようなケースで発生しやすくなります。

  • 長期間にわたって頻繁に頭痛薬を使用する(例:月に10~15日以上)
  • 痛みが治まらないため、服用量や回数を増やしてしまう
  • 痛みが出る前に予防目的で頭痛薬を服用する

また、MOHは片頭痛や緊張型頭痛などの基礎疾患を持っている方に起こるという特徴もあります。これらの頭痛を根本的に治療せずに薬を飲み続けると、薬剤の使用過多により、MOHが引き起こされることがあるのです。
頭痛薬を過剰に使用すると、脳が痛みを過剰に感じるようになってしまいます。これは、長期間の頭痛薬の使用によって、痛みの神経回路が過敏になり、結果として、さらに薬を飲むという悪循環に陥ることがあるからです。

MOHの症状

MOHの症状は、以下のような特徴があります。

  • ほぼ毎日のように頭痛が続く
  • 薬を飲んでも十分な効果が得られなくなる
  • 頭痛の種類が変化する(痛みの強さ、部位、種類が様々になる)
  • 朝起きたときから頭痛があることが多い

もし、このような症状が続くようであれば、MOHの可能性があります。早めに対処することが大切です。

MOHを防ぐためのポイント

MOHを防ぐためには、適切な頭痛薬の使い方がとても重要です。以下のポイントを守って、頭痛薬を上手に使いましょう。

  • 用法・用量を守る(1週間に2~3日以内の服用が推奨されます)
  • 頭痛が続く場合は早めに医師に相談する
  • 頭痛日記をつけて、薬の使用頻度を把握する
  • 薬に頼りすぎず、生活習慣の改善を意識する(睡眠・ストレス管理など)

正しい使い方を守ることで、MOHを防ぎやすくなります。

MOHは治るの?

MOHは適切な治療を受けることで改善可能な頭痛です。まずは薬の使用を中止することが望ましいですが、自身で中止することが難しい場合や、基礎疾患である片頭痛や緊張型頭痛の治療が必要な場合もありますので、MOHが疑われる場合は、自己判断による薬の服用はやめて、必ず医師に相談することが大切です。特に日本頭痛学会が認定している頭痛専門医を受診することが勧められます(https://www.jhsnet.net/ichiran.html)。

まとめ

OTC医薬品の頭痛薬は、正しく使えば頭痛を和らげるのにとても役立ちます。しかし、飲みすぎると「薬剤の使用過多による頭痛(MOH)」を引き起こし、頭痛が慢性化してしまうことがあります。
MOHは、薬の使用頻度が多くなることで脳が痛みを感じやすくなり、悪循環に陥ることが特徴です。しかし、適切な治療を行えば改善することが可能です。頭痛薬の使用をコントロールしながら、生活習慣を見直し、必要に応じて医師の指導のもとで治療を進めることで、MOHから抜け出すことができます。
もし、「頭痛薬が効かなくなった」「頭痛が慢性的に続いている」と感じたら、一度医師や薬剤師に相談してみましょう。適切なケアを受けることで、つらい頭痛と上手に付き合っていけますよ。

監修
柴田 護先生

東京歯科大学 市川総合病院 神経内科 教授

平成4(1992)年慶應義塾大学医学部卒業。 日本神経学会神経内科専門医、 日本内科学会総合内科専門医、 日本頭痛学会理事、 日本脳卒中学会脳卒中専門医、 日本認知症学会認知症専門医。
※掲載している情報や、監修者の所属・肩書きは、記事作成時点のものです。

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MAT-JP-2501264-2.0-07/2025|最終更新日: 2025年7月2日